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2026.8.17
トミヤママチコのブログ
色を見れば時代が見える ― 流行色の、そのもう少し向こう側 ―

色の仕事を長くしていると、その時代には、その時代の「色」があるのではないかと強く感じます。
流行色というよりも、もう少し大きなもの。
社会全体を包んでいるような色です。例えば大正時代。
当時の着物や図案を見ると、実に華やかです。色も大胆、柄も大胆。
昔の日本というと、なんとなく堅苦しい階級社会を想像しがちですが、あの色を見ると、大正デモクラシーに象徴される新しい時代の空気も背景にあったのでしょう。
「いやいや、結構時代を楽しんでいたのでは」
と、納得できる何かがあります。
ところが戦前、戦中へ向かうと、色も次第に重くなっていく。
服も、建物も、街も重い。権威的。
社会が窮屈になると、色まで窮屈に見えてきます。そして敗戦。
物がない。
当然、色もない。ところが、そこへアメリカンカルチャーがどっと入ってきます。
進駐軍、その家族。映画、雑誌、広告、衣服、日用品。
伝えられる色は、強い。明るい。鮮やか。
それまで日本人が見ていた色の世界とは、ずいぶん違ったはずです。
戦後は、色彩の消え去った日本と、アメリカからやってきた強烈な色彩とが、いきなり出会った時代でもあったのでしょう。
そして日本が復興期に入ると、今度は自分たちの暮らしの中にも色が増えてきます。
家電が色を持つ。
広告が色を持つ。
ファッションが色を持つ。高度成長期には、色も形もどんどん元気になる。
「明日は今日より豊かになる」。
そんな時代には、色まで前を向いているように見えます。
そんな時代に、世界的な流行色の組織として立ち上がったのがインターカラーです。日本は1963年の創立時から参画しています。
色への意識が確実に高まっていった時代だったのでしょう。
流行色というものも、もっと大きな「時代の波」があって、その中に現れる一つの現象なのではないでしょうか。
パーソナルカラーも、また同じことが言えるのかもしれません。
景気、社会情勢、価値観。
そういうものが混ざり合って時代の気分をつくり、その気分が色にも反映される。
もちろん、
「不景気になりました。では黒です」
というほど簡単な話ではありません。
ただ、華やかな好景気の後、黒や無彩色が大きな存在感を持つようになったことを考えると、社会と色はやはり無関係ではなさそうです。
では、今はどうでしょう。
街を見ていると、強い色が少ない。
ベージュ、グレー、くすんだピンクやブルー。そして、安全色扱いの黒。
印象はスタイリッシュです。
だけど、一概にスタイリッシュと言い切るほどの主張もない。
むしろ明るく、軽い。でも、彩度は低い。
明るいけれど、強くはない。
軽やかだけれど、元気いっぱいでもない。なんだか今の日本に、似ている気もします。
こうしてみると、流行色だけではなく、その背景にある「時代の色」を見てみたくなります。
色相はどうだったのか。
明度は。彩度は。
そして質感は。配色は。時代ごとに並べてみたら、歴史の教科書とは少し違った日本が見えてくるかもしれません。
色というのは、黙っているようで案外おしゃべりです。
さて、2026年の日本を一枚の色見本にするとしたら、何色でしょう。
ちょっと考えてみると面白いかもしれません。
私的には、グレージュかな。
まだまだ色が出てくるまでには、もう少し時間がかかりそうです。

