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  • 2026.9.23

    トミヤママチコのブログ

    「似合う色」と演出効果について」 ― 色は、人をつくり、物語までつくる ―

    パーソナルカラーという言葉が、ずいぶん有名になりました。
    「私はイエベ」
    「私はブルベ」
    今では、ごく普通にそんな会話が聞かれます。
    40年以上、色と人との関係にかかわってきた私としては、色がこれほど身近になったことは、もちろんうれしいことです。
    けれども、少々気になることもあります。
    色の話が「似合う・似合わない」だけで終わってしまってはいないでしょうか。
    色は、そんなに仕事の少ないものではありません。
    むしろ、かなりの働き者です。
    人を美しく見せることもできれば、人の性格を語ることもできる。
    場面の空気を変えることもできれば、ときには物語の行方まで予感させる。
    私は、そんな色の力をもっと使ってほしいと思っています。
    この人には何色が似合う?――ではなく
    たとえば、アニメやドラマの登場人物を一人つくるとします。
    明るく快活で、少々おせっかい。
    登場しただけで、その場が賑やかになるような人物。
    さて、この人物にどんな色を使うでしょう。
    明るい色、高彩度の色、暖色系。
    いろいろな選択が考えられます。
    では反対に、寡黙で、冷静で、どこか虚無的。
    何を考えているのか、簡単には読ませてくれない人物ならどうでしょう。
    ブルーや紫などの寒色系。
    あるいは明度や彩度を抑えた配色。
    おそらく、先ほどとは違う色の世界を考えるでしょう。
    もちろん、明るい人物を真っ黒にしてはいけないという法律はありません。
    ニヒルな人物をオレンジ色にしても、逮捕されることはありません。
    むしろ、あえて逆を使うことで、意外性のある人物が生まれることだってあります。
    ただし、大切なのは、
    「なぜ、その色を使ったのか」
    です。
    ここで、色は単なる飾りではなくなります。
    色は、本人より先に喋ってしまう
    面白いことに、色はかなりおしゃべりです。
    登場人物がまだ一言も喋っていないのに、
    「明るそう」
    「冷たそう」
    「優しそう」
    「何か秘密がありそう」
    「どうも、この人は信用ならない」
    などと、こちらに勝手に情報を送ってきます。
    本人にしてみれば、少々迷惑かもしれません。
    けれども、映像やアニメをつくる側から考えれば、これは実に便利なことです。
    服の色。
    髪の色。
    背景の色。
    光の色。
    それらをどう組み合わせるかによって、人物の印象は大きく変わります。
    つまり、
    「この人には何色が似合うか」から、
    「この人物をどう見せたいから、この色を使う」へ。
    ここで、色の使い方は大きく変わります。
    私は、この発想の転換を「色彩演出」の大切な入口だと考えています。
    ところが、色が演出するのは人物だけではない
    ここからが、さらに面白いところです。
    同じ人物が、同じ場所に立っている。
    けれども背景を変えてみる。
    明るく柔らかな色調なら、穏やかな午後になる。
    彩度を落とせば、どこか記憶の中の風景のようになる。
    暗いブルーを広げれば、不安な夜になる。
    そこへ赤をほんの少し入れただけで、「何か起こるのではないか」という感じさえ生まれる。
    人物は何もしていません。
    セリフもありません。
    それでも、物語が動き始める。
    色は、人を表現するだけではなく、場面をつくり、感情を動かし、物語の空気までつくることができるのです。
    ここまで来ると、「似合う色」という話からは、ずいぶん遠くまで来たように見えます。
    でも私は、実は同じ色彩理論の延長線上にあると思っています。
    「なんとなく、この色」を、その先へ
    クリエイティブな仕事では、感性はもちろん大切です。
    「なんとなく、このブルーがいい」
    その感覚を否定する必要はまったくありません。
    ただ、そこで一度立ち止まってみる。
    なぜブルーなのか。
    色相なのか。
    明度なのか。
    彩度なのか。
    隣に置いた色との関係なのか。
    「なんとなく」を分析していくと、そこには案外きちんとした理由が隠れています。
    色彩理論とは、難しい言葉を覚えて利口になるためのものではありません。
    自分が感じたことの理由を知り、表現したいものを色という言語に翻訳するための道具。
    私は、そう考えています。
    だから、パーソナルカラーのもう一歩先へ
    私は長い間、パーソナルカラーを仕事にしてきました。
    だからこそ、「似合う色」の力はよく知っています。
    でも、パーソナルカラーは色彩のゴールではありません。
    むしろ、大きな色彩の世界への一つの入口なのではないでしょうか。
    似合う色を選ぶ。
    そこからもう一歩進んで、
    どう見せたいのか。
    何を感じさせたいのか。
    どんな人物をつくりたいのか。
    どんな物語を伝えたいのか。
    そこから逆算して、色を選ぶ。
    新パーソナルカラー協会でも、検定や色彩教育の中に、こうした考え方を少しずつ取り入れ始めています。
    「この人には何色が似合いますか」だけではなく、
    「この人物をこう表現したい。さて、あなたなら何色を使いますか」
    と考えてもらう。
    アニメ、映像、漫画、ゲーム、ファッション、メイク、舞台、広告――。
    これから色を使って何かを表現する人たちには、ぜひ、そこまで色を使ってほしいと思っています。
    似合う色を探すだけでは、少々もったいない。
    人をつくる。
    空気をつくる。
    物語をつくる。
    色には、そこまでできる力があります。
    せっかくそんな働き者がそばにいるのです。
    もう少し、働いてもらってもいいのではないでしょうか。